アリスの話の続き     第22話

両手を拘束され
3本の点滴に人工呼吸器を着けられ
まったく話す事が出来ない
状態で10日間ぐらい
アリスインワンダーランドの幻覚に
毎晩襲われていました。

今回は術後の痛みが半端なくすごく
あまりの辛さに幻覚で殺されそうになった時に
抗うのをやめて死んでしまおうと思ったのですが
もちろん死ぬわけがなく

また幻想の繰り返しです。

今書きながらその頃
もう一つの幻想にも苦しめられていたのを
思い出しました。

そちらは幻覚というより悪夢で
ほぼ、うとうとしている時に見ており
出てくる風景は山の近くの町に
港の工場とその近くの飲み屋さん

超能力を持っているグループが出てきて
自分は今はその記憶がないんだが
そのグループに入っており
なんか裏切って追われている
みたいな設定でしたw

いっつも場面は夜で追い詰められて
たとえ元気になってもずっと逃げられない
と言われたのを思い出しました。

そして能力者同士での戦いの日々ですw


アリスの話にもどして
幻覚で一番派手だったのは21時を過ぎて
消灯時間になり部屋の明かりが
少し暗くなると始まるショー!?です。

まず霧が立ち込めてきて
真ん中の先生方の机の後ろのガラスの奥に
得体のしれない化けものが現れ
次に各ベッドの上にある天窓が開き
上から化け物が下りてきて
ベッドごと上に運んで行ってしまいます。

今日は隣の人だ…
昨日は左前の方の人だったと
そしてとうとう自分の番が来て
上にひっぱりあげられると
屋上にはレールが引いてあり
周りにには沢山の見物人がいるではないですか

そして僕の前にもレールに繋がれて
回っている人がおり
その人はなんとだんだん風船のように
『プ〜〜〜〜』とふくらんでおり
そして5mくらいまで大きくなったと
思ったら『パンッ!!』と割れてしまいました。

すると観客からの奇声が飛び交います
そうです。みんなは破裂するのを
楽しみに見にいているのです。

そしてその後ろを流れている自分にも
首からの点滴の管より空気が注入され
だんだん膨らんで来たのでした。

その時足の先になにか痛みを感じ
見てみるとなにかが刺さっており
そこから空気がシューーーと
抜けて行くではありませんか!

そして1周してもとの位置にもどり
下に戻されてホッとしていると
看護婦さんが来て
『次は逃がさないからね』と言われ
先生に筆談でその内容を説明して
助けて下さいとお願いしていました。

今考えるとこんな狂っていた俺の話を
先生はよくきちんと聞いてくださっていたなと
頭のさがる思いでいっぱいです。

『三輪先生本当にありがとうございました。
そしてすみませんでした』

そんな幻覚もなでしこがワールドカップ
優勝した頃にはだいぶなくなり
正気の時間がだいぶ増えてきました。

しかしもう大丈夫かなと思ったやさきに
新しくICUに入ってきた人が同時に2人も
ICUシンドロームで騒ぎだしたのでした。

そうしたらなんとほとんどなくなっていた
自分の幻想もなんと復活してきたのでした。

2日目、3日目とだんだんひどくなってきて
このままだとまた戻ってしまうと思った私は
先生にICUから出してもらう事を懇願しました。

せめて正気があるうちにと…

しかし体はまだ出る状態にまで
達しておらず、UHCも空いていないと
いうことで先生も悩まれていましたが
なんとか重症者個室に移動になりました。

そしてここから劇的に心も体も回復して
いくのでありました。


そしてこの話もたぶんあと1話で
とりあえずの終わりになりそうです。

最後はあとの退院までの5週間を
書きたいと思います。